原子力
 −自然に学び、自然を真似る−
         
藤家 洋一
(株)ERC出版(2005.6.25出版)
383p 26cm(B5)
ISBN4-900622-35-4 c3040 \2,800E
定価2,940円(本体2,800円)
自然に学び、真似る 総合科学の巨大殿堂
本書を重く手に感じながら考えた。S・W・ホーキング博士は「宇宙は全く自己完結的であり、境界がなく始まりも終りもない」「創造主(神)の出番はどこにあるか?」と世に問うた。宇宙は無限の過去から、永遠の未来に存在し続ける。人間がそれを科学で理解し解明し続けるには、驚くべき時間と費用を必要とするだろう。
本書は、著者・藤家洋一博士の数ある著作の中でも、際立って歴史性と専門性を深めながら、洗練された全体像つまり総合科学としての原子力の巨塔に迫っている。それは原子力を狭義に解さず、永遠の未来に存在できる原子力の総合哲学、原子力の歴史哲学的思考を試みている。もちろんこれだけの巨大科学技術である。確たる専門分野の定礎が必要だし、宇宙からミクロ世界、量子力学の進展、放射線、核反応、核分裂の物理から核融合反応、さらに次世代原子力の目標、など画然たる原子力政策によって整理体系化しておかねばならないものばかりだ。著者は、基礎科学分野の理解なくして全体補足はできない、全体像を描ける若者には、自然は単純で奥深い存在と理解されるだろう。科学技術は「自然に学び、自然を真似るところから始まりそこに行き着く」と結ぶ。
本書の対象とする読者について、藤家博士は「できれば大学院生に読んで貰いたい」と述べている。基礎を固めて専門分野をつき進み、やがてその専門性先進性の先に、大きな広がりが「総合科学の巨大な殿堂」として映ってくる。原子力が単なる発電技術の下僕に堕ちるのを許さない、著者70年の生涯を賭けた原子力哲学が息づいている。東大(院)物理を出てドイツ留学、大阪大学助教授、名古屋大学プラズマ研教授、東京工業大学原子炉工学研究所長、転じて内閣の原子力委員会委員長にまで昇りつめた硬派の科学者だ。教え子にも恵まれ学閥人脈も賑やかである。新著「原子力」は、科学の永遠の未来に向けた「預言」でもあると考えられる。本書は内容によっては、一部数式が入っていて、原子力の思考分野を主軸に読む読者には少し面倒かも知れないが、読者菁菁を期待する。
(コラムニスト 松田 博雄)
書評:「原子力eye」日刊工業出版プロダクション発刊(Nov. 2005 Vol51 No.9)37p
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エネルギー政策研究所長・京都大学名誉教授 神田啓治
本棚:「ISOTOPE NEWS」社団法人日本アイソトープ協会発刊(Nov. 2005 No.619)40p
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首都大学東京都市教養学部 海老原充
新刊紹介:「日本原子力学会誌」日本原子力学会誌, Vol.48,No.4(2006)278p
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東京工業大学 COE特任助教授 高木直行
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