はじめに

3月11日、これまで経験したこともなかった地震が東北、関東の広い領域に発生した。これまでのところその災害は死者行方不明者の数でこれまでの最大被害を与えている。

この地震は同時に津波を伴い海岸にそって大きな被害をもたらす結果となっている。我々原子力界の人間にとっては津波の波高はこれまでに想定し対応してきた範囲を超え、特に原子炉の非常冷却系の作動を不可能にした。この結果安全確保の基本である、「止める、冷やす、閉じ込める」のうち、原子炉緊急停止には成功したものの冷却に関しては地震で作動し始めた非常用電源が遅れてきた津波による冠水で作動不能に至った。この冷却能力の欠如は崩壊熱除去を不完全にし、その結果、高温になったと考えられる燃料被覆管のジルコニウムと水との反応を招き原子炉建屋などでの水素爆発につながったと考えられている。また水蒸気爆発の発生も伝えられている。このような急激な水素燃焼の結果原子炉建屋の破壊や、格納系ではサプレッションプールの漏えいが報じられている。特に後者は格納系の健全性に影響を与えるもので閉じ込め機能に影響を与える。この段階に至って言えることは冷却の必要性である。とにかく燃料中の放射性物質を保持するため、冷却をおこなうことで、軽水炉の安全の最重点事項が「冷やす」ことにあることを改めて認識させたことであろう。

非常用電源が使えない状態での冷却はもっぱら外部からのポンプ車による海水の導入と注水が中心で、次第に改善され、表面温度がいずれも水の沸点である100度(128度2号炉?)以下に保たれる状態になったと報告されている。外部電源を確保することに努力がなされてきたが、事故後10日を経てやっと目鼻が付いてきた。これによって事態は大きく収束に向かうものと考えられる。

今回の事故においても環境への放射線、放射性物質の漏えいは起こった。

そのため、国際基準に基いて東京電力福島第一原子力発電所から20Kmまでは避難領域に、20Kmから30Kmまでは屋内退避領域に指定された。しかし、放射能の不安に加えて日常生活に必要な物品が不足したこともあって多くの人が町の役場機能を伴って県外にまで移動している。(データ表を)

また多くの国の大使館は日本滞在の自国民に帰国を呼び掛けたり、影響のない関西に移動するよう呼びかけたり、チャーター便を手配したりしている。このような措置は外国で発生した場合に日本政府も似たような措置をとることはこれまでもあったことであり、非難の対象にはならないと考える。

また最近になって農産物の中に放射性物質の要素が基準値以上に検出されている。これらは直接人体に影響するレベルでは決してないが市場への提供は行われず処分されるものと考えられる。

放射線による災害の程度

1)原子力発電所での事故発生以来公衆に対しては放射線災害による死者ゼロを求めて対策を施してきており、いまだこの目的は果たされている。おそらく目的は果たせるものと考えられる。この事故に結果放射線災害で生命を失う公衆はないと考えられる。

これまでの軽水炉の実績は今回も生かされた。この事実は何を我々に求めているのか?

2)社会にまた海外に何が問題であったか?死者ゼロでまだ足りない部分とは何か何に気をつければいいか?原子力発電に究極的に関係者はリスクゼロの世界を追求しているが、社会的にはリスクは原子力以外にも存在しており、全体として何を求めているのか?

原子力界はリスクゼロを求めるとしても、社会は全体の中で将来の総合科学技術としての原子力に総体として何を求めているのか?問いかけが必要ではないか?

  

日本放送電話取材および出演 電話取材 (3月14日、17日)

 

いろいろ放射線量についてのニュースがあり、一般の人は不安になると思うがあなたはどう感じているか

 

一般の人の心配の種が増えるような印象を持っていますが、これらは安全を考えてかなり低い放射線の影響のレベルから話されています。現在は健康に直接影響があるというものではありません。報道の中に出てくるレントゲン検査や、CTスキャンの際に浴びる放射線量と比較しながら聞いていただくとよいと思います。レントゲンやCTスキャンで浴びる量は決して影響があるとは思わないでしょう。気にすることはありません。今後不安になる状況が全くなく終わると断言できるほど様子が完全にわかっているわけではありませんが、その時にはきちんとした情報提供と勧告が行われるでしょう。

原子力の安全確保は必要に応じて原子炉を1.止める2.冷やす3.放射性物質を閉じ込める の3つの手段で達成されます。今回も運転中の原子炉はすべて地震を感知して止まりました。日本の原子力発電の原子炉(軽水炉)は止めることにそれほど問題があるわけではありません。それより、冷やすことが安全確保上大切です。今回地震に続く津波でせっかく動き始めた緊急冷却系のヂーゼル発電機が津波で冠水するなどしたため、作動しなくなり冷却が出来なくなったのです。

原子炉の状態は緊急な対応を住民に求めるようにはなっていないと思います。然し2号炉のように昨日までの私の理解と比べて少し悪化したように思えるものもあります。然しチェルノブイリ事故にはなりません。スリーマイル事故を参考に見ていくといいと思います。

アメリカのスリーマイル島事故でも冷やすことが出来なくて事故が拡大し、炉心世王有に至り世界を騒がせました。然し閉じ込めることに問題はなく2時間半過ぎたころから冷却閉じ込めが出来るようになり、事故を収束に向かわせることが出来ました。

日本の場合サプレッションプールに漏れがあるとすれば閉じ込め系統にも問題が出たことになります。しかしここで大切なことは放射性物質の閉じ込めの原点はやはり燃料にあります。原子炉の放射性物質の大半は燃料中にありますから、それを閉じ込めることすなわち燃料が高温になって放射性物質が外部に出てくることを防ぐことすなわち冷却することが最も大切です。とにかく原子炉を冷やし、燃料を冷やすことです。

 

現在原子力発電所から20Km離れたところまでは避難勧告がで、20Kmから30Kmに住む人には屋内待機勧告が出されています。この目的は何でしょう。

 

この目的は今回の事故が原因で一般の人が放射線災害で生命の危険にさらされることを防ぐことです。端的にいえば死者ゼロを目指しています。また健康影響を最小限にとどめることです。

東電と国では話が少し違うように思いますが

 

原子力のような新しい科学技術を導入し、定着させていくためには事業者が計画、建設運転を通じて責任を持つことだけでは不十分で国が方針を示し、基準を作り、許可をするようにして行くことが大切です。世界がそうしています。

今回の事故が想定外だと言われていますが、それを言われるのは納得がいかない。

 

もちろん地震や津波についてはこれまでの歴史で経験したものを調査し、加えて余裕を持って設計建設することで、対応していたが、今回それを超える大きな津波が来たことが事故に発展し、事故を複雑にしました。現在日本には52基の原子炉使って発電をしています。その事実は否定できない。したがってこのような想定外の事象が発生したからにはそれについても今後対応できるようにしなければなりません。

海水で原子炉を冷やすのは普通にはあり得ないことですし、その結果原子炉が使い物にならなくなる恐れもありますが、安全を最優先して海水による冷却を当事者が判断したことは評価に値すると思います。

4号機で燃料プールの問題が指摘されていますが。

 

私の理解をはるかに超えていて今説明は残念ながらできない。自体が明確になった段階で説明させてほしい。プールの水が揺れでなくなったとか、冷却不足が原因で水素爆発に至ったようなことも言われているがプールはすべての炉の近くにあり、それほど違ったものではないはずだからどうして4号機だけかが理解できない。ほかのものもそうなるのか?

昨日4号機で爆発音がし、火災発生

昨日段階では私のこれまで15メートルの深さを持ちその底に5メートル程度の高さの使用済み燃料が収まっている使用済み燃料プールが破損してしたり、地震の揺れで水がなくなるとの認識がなかったため、現象の推測が出来ず、解説を断ってきた。使用済みプールの水位低下による水素発生とそれに伴う爆燃、であると考えるのが現段階では妥当との判断に至った。今日また火災が確認されたことにより、爆燃とはいえないまでもその後の発生水素の燃焼に伴う火事と判断するにいたった。30分程度で消火したのは水素がなくなったためと考えられる。なお水位低下があるとすれば繰り返し、火災が発生することが考えられる。

現地でもまだ正確な情報を出すのが困難な状況かもしれないが状況が分かり次第解説させてほしい。

大きく安全指針を改定する必要があるか?

 

スリーマイル事故の時は安全指針などで54項目の改善を行った。今回も指針見直しは必要だろう。事故の終息後関係する機関で行われることになろう。東電での特異な事故の内容かどうかは女川や東海の原子力施設などでおこっている現象との関連も考える必要があろう。またこの種の津波が1000年前にも起こっているとの新しいニュースは改定のために重要。これぐらいの頻度で発生するものに対しては当然対応できなければならない。

使用済み燃料プールの耐震性、津波に対する態勢。究極の熱除去をどう考え、系統の独立性、冗長性をどうするかなどを中心に議論され改定が行われるのではないだろうか。 

東京は安全か

似た質問をドイツのフランクフルターアルゲマイネの記者から受けその結果は3月13日の新聞に掲載されている。ドイツはチェルノブイリの時の記憶が残っていてあのような質問になったと思うが私の答えはいくら想像をたくましくしても東京で避難などの危機対応をすることにはならない。チェルノブイリ事故とは明確に違っていると話しました。

電力供給

残念ながら簡単に復旧することにはならない、他の発電方式を動員し、また他電力からの融通など全国的に考えた協力体制が必要になろうがそれでも完全に同じように供給できるとは考えにくい。又将来的には日本の一般の人たちの原子力対する理解あるいは危険と思う度合いが増大するかどうかも関連してくるだろう。