韓国ソウル市内プレスセンターにおける記者会見 要旨

2011年4月20日(水) 10:30〜12:00

ソウル国立大学医学部門核医学部 Myung-Chul Lee 教授から藤家先生の紹介があり、藤家先生の挨拶の後、プレス科学部関係記者20名と次のような質疑応答が行なわれました。

藤家先生の挨拶:

福島第一原子力発電所では、予想を超える津波に対し、為すすべもなく非常用電源を失いました。私は韓国と20年以上のお付き合いを通し、韓国が、隣国でしかもアジアにおける科学先進国であることから、早い時期に韓国に来て科学者の前で説明することが大事であると思っていました。まず、申し訳ないという気持ちと、分かっていることにすべてお応えするということをお伝えしたいと思います。

質問:民間会社であったのでこのような事故に発展したのではないですか?また、情報発信が少ないのではないですか?

回答:民間と政府の取り組み方については、原子力発電が新しく社会の構成要素として位置づけるには民間会社だけではできないことは当然ですが、民主主義社会では民間で行われることが望ましい。しかし、直接安全に関わることについては、国が指揮して守らせなければいけないということで、両国とも、そのように対応してきました。今回のことは自然現象に対して何処までどう対応するのかという話につながります。日本は地震国であることは、日本人が良く知っています。地震ついての安全尤度は重要機器については一般の耐震設計の3倍の耐力を持たせてありますので、設計ではM8.0ですが、今回の地震はM9.0であったにもかかわらず自動的に止まり、地震にたいしては十分機能しました。原子炉が安全に止まることが如何に大事かを考えてください。韓国やアメリカ、また日本の原子力発電の多くは軽水炉です。軽水炉は、原子炉の中に水が入っていれば、安全です。したがって、止まって、非常用電源で冷やしていましたが、50分後に津波が来ました。6mの津波を考えていましたが、15mを越える津波が来た結果、冷やし始めた機能が維持できなくなり、ジルコニウムと水が反応し水素が発生し、水素爆発が起こり放射能の閉じ込めに影響しました。民間ではなく、国がやればうまくいくとは思いません。民間が柔軟にやり、肝心なところは国が指導監督を行なうことが必要です。私は、20年原子炉安全審査会におり、何処まで安全にすべきかという基準を定めましたが、安全を値切る話はありません。民間だから安全を疎かにするという話がありましたが、自然現象に対しては過去の歴史を調べてそこに尤度をとっています。津波に対して不十分という言い方は一般には言えます。青森から千葉に掛けて津波の被害が出ていますが、津波に対して十分耐えられる防潮堤を作って、完成のお祝いをした町がありますが、今回の津波で破壊されてしまいした。今回の津波で、死者、行方不明者は3万人を越えています。原子力発電所は事故が起きないよう安全にやってきましたが、残念ながら起きてしまいました。これからは事故管理(アクシデントマネージメント)を積極的にやってゆくことになります。

情報が来ないという点については、私についても同様です。従って、分かったことを元に説明しますと言いました。日本の原子力も韓国との友好関係、協力関係が必要です。事故が起こってから社会に何を説明すべきかを考えました。原子力の安全は何か、人が放射線で急性死亡や晩発性死亡を防ぐために20kmより遠くに避難するようにし、次に20kmと30kmは屋内退避としました。これは、放射線を浴びないようにするためでした。次に食べ物、水、牛乳など放射性物質で汚染した食品を食べないようにする努力でした。原子炉が安全に止まったことに加えて、このような対策を採ったことは重く評価します。事故後すぐにドイツの新聞からインタビューを受け、チェルノブイリと違うから東京が影響を受けることはありませんと言いました。

質問:INES 7と評価されていますが、チェルノブイリと同じではないですか?

回答:INESのクラス分けが7としたからといって、チェルノブイリと同じような深刻な事態かというとそうは思いません。INES 4までは、事故の程度を評価していますが、INES 7は放射性物質がどれだけ漏れたかという判断しかありません。チェルノブイリは原子炉が破壊し、福島は、原子炉の安全停止の後の放出なのでチェルノブイリとは違います。また、チェルノブイリは事故が知らされず、福島は知らされています。一般の人々の生命、健康を保つという点も大きく違います。INES7という評価で、国民の政府に対する不審は事実と思います。しかし、広島、長崎の被災地、カザフスタンのセミパラチンスクの調査された放射線医学の専門家の方々が、今回の放出された放射能は健康に及ぼす影響はありませんというメッセージを出しています。海への放出について事前連絡がなかった理由は分かりません。大きな放射性物質の放出を避けるために、それより低いレベルの汚染水を放出したという発想になるかと思います。

質問:事故の終息にはどのくらいかかりますか?

回答:事故の謝罪ですむとは思っていません。これからのことが大事で、今回もプレス対応が3回目になりますが、毎回そのことが話題になりますが、日本国民に対しても話したかどうか問題です。事故の終息は何を持って終息と呼ぶのかによります。3つの原子炉に水を満たし、温度を下げ、100℃未満になれば終息したと言えるでしょう。終息に向けた効果がなかなか出ません。KAISTでも議論しましたが、大体その方向に向かっています。今朝のテレビでも伝えられていますが、進みだしたようです。完全な終息は、避難した一般の人達が戻ってくることで、そのためには10年というのは想定の中に入るでしょう。

質問:福島の古いプラントで事故が起きましたが、韓国では古里原子力発電所が古いプラントであり、寿命延長をしていますがこれについてどう思いますか?

回答:日本でも寿命延長については幾つかやってきましたが、安全の問題はありません。廃止して新設するとなると10年はかかります。国か国民かが決めることと思います。

質問:安全基準が見直されますか?

回答:原子力の安全は何のためかといいますと一般人の放射線災害をゼロにするということです。津波に対する備えは変えることになります。TMI事故は、日本でも当時軽水炉の安全性の実証であったと言ったことがありますが、その時は、反発を買いましたが、今でも正しいと思っています。TMI事故は、日本でも当時、より安全にするために54項目に亘っての改善事項を運転中のプラント、今後のプラントへ反映したことを覚えています。従って、今回は津波の高さを何処までという話は起こってきます。事故が起こらないようにしてきましたが、事故が起きたときには、影響を小さくするアクシデント・マネージメントの話は出てきます。アクシデント。マネージメントは専門家の間では10年前から検討はしていますが、今回の反省として重要です。

質問:テラベクレルの放射能が今でも出ているのではありませんか?

回答:軽水炉は、地球の自然の中で、同じしくみの原子炉が20億年前に18箇所で、制御棒も使わずに80万年も運転していました。ウランと水があってという条件ですが、現在世界で使われている軽水炉と同じです。TMI事故は原子炉容器の中にある水を外に出してしまったという事故で炉心の半分以上が熔け4万Cuが環境に放出されましたが、結局周辺住民に影響はありませんでした。福島は、止まった後の熱を、冷やしたくとも動力がなく冷やせなくなり、その結果大量のI131,Cs134,137が出ました。特にI131は甲状腺に蓄積すると甲状腺がんになりますが8日で半分になります。1ヵ月後には10分の一になります。水素爆発で放出された以降は、そのような減衰をしています。

質問:韓国の原子力発電所の安全性についてどう思いますか?

回答:韓国で最初に見たのは月城のCANDUでした。古里発電所も見ましたが、自然災害について議論できるようには見ていません。韓国の方々と年に2〜3回話し合っていますが、これだけの専門家がおられますので、きちんとされていると思います。

質問:今後の対処はどうなりますか?

回答:何から取り掛かるのかについては、当事者と直接コンタクトできていないので分かりませんが。津波に対しては、直接の津波対策に加えて、全発電所にアクシデント・マネージメント・マニュアル及び、各発電所毎のチェックとなるでしょうが、具体的には保安院の職員が訪問してチェックし、それに対する電力会社の対応が求められるでしょう。

質問:規制体制は問題ないですか?

回答:原子力委員会、原子力安全委員会が内閣府に設けられ、動力用原子炉に対する規制は、経済産業省の中にある保安院が行っています。経済産業省は原子力推進の役割もあります。JMTR、常陽、もんじゅの研究用原子炉については、以前、科学技術庁が行い、それは現在文部科学省が管轄しています。今度の事故で、一つの省の中に推進と規制を扱っているのはおかしいという議論もあり、今後議論されるでしょう。

質問:避難区域については日米に差があるのはどうしてですか?

回答:避難区域の設定は状況により変わってきます。日米の差は、情報の差であり、日本の方が精度が高いといえます。避難区域、屋内退避の設定はかなり低い値で抑えています。また、風向きによっても異なるので、必要が生じたときに考えてゆくということになるでしょう。